第10期会長 中嶋哲彦 就任時の挨拶

 先般執り行われた本学会の役員選挙において、図らずも第10期の会長に選出されました。まったく予想していなかったことなので、たいへん当惑しています。私には荷が勝ちすぎた大役でありますが、ご選出いただいたことに感謝しつつ、3 年間務めさせていただきます。

 私は発足当初からの会員ではないため、本学会の設立の経緯や当時の取り組みには不案内です。私のように初期の状況を知らない者が学会の運営に関わるようになったことは、本学会の末広がりを表すものかもしれません。しかし、このあたりで学会の歴史を整理しておくことも大切かもしれません。

 ここでは、この10年を振り返ると、本学会は次のテーマで課題研究を推進してきました。

 第7期(2011〜2014 年)「構造改革下における自治体の教育政策をめぐる動向―教育政策研究の課題と方法をさぐる―」

 第8期(2014〜2017 年)「自治体教育政策における構造改革と教育的価値の実現」

 第9期(2017〜2020 年)「教育と福祉の統一的保障をめぐる教育政策の課題と展望」

 それぞれの時期における教育と教育行政の実態を見据えつつ、それらを教育政策研究の視点から分析しようとしてきたものだと思います。また、近年は、子どもや若者の学びと暮らしを総体としてとらえる視点がより鮮明に打ち出されていると思います。課題研究だけでなく、会員の個人研究もまた、それぞれの視点から教育政策にかかわる理論的・実践的課題に応えようとする意欲にあふれていると思います。

 私自身は、教育政策は、公権力を独占的に行使する立場にある国家(差し当たっては国及び地方公共団体)が、公権力行使の一環として公教育を組織・ 管理する過程で編成する、教育理念、教育制度の編成、教育行政の方針、そしてこれらを物質的に裏付ける教育財政の構造体であると考えてきました。この意味で、ある教育政策を論じるときは、それを編成し遂行する国家を論じないわけにはいかないと考えています。同時に、私は、子ども・若者の現実に着目し、その生に寄り添わないかぎり、教育政策を批判的に分析する軸を見失ってしまうと信じています。

 昨年末から新型コロナウイルス感染症が全世界的規模で広がり、日本では全国一斉・一律の休業措置が政策的に選択されました。そして、休業が続くなかで、子ども・若者の生命・健康と学びの保障が鋭く問われました。この大きな課題にどういった教育政策で応答するのか、日本の国家の本質も問われて いると思います。そして、何より、教育政策研究者である私たちもまた、この問いに答えることが求められていると思います。

 新型コロナウイルス感染症とそれに対する政策がもたらす諸問題の当事者として、いまを主体的に生きる、その一環として教育政策研究を位置づけていきたいものです。