広瀬裕子 第9期会長 就任時の挨拶

第8期に引き続き第9期の会長を務めることになりました。よろしくお願いいたします。

3年前の会長就任時の挨拶に、本学会の創立以来の20年は政策状況の変化に伴走する20年であったと書きました。教育政策を論じる土俵上のアクターの関係が変わっただけでなく、土俵自体も変わる20年だったという趣旨です。「他流試合」も茶飯となり、今では、公的な教育サービスの提供が、国や地方公共団体という公的行政権限主体に限られなくなってくる流れにある、ともいうべきかもしれません。

最近私は、戦後の教育行政学の土台を作った宗像誠也の功罪ということを考えています。宗像が、教育内容の領域を行政のオフ・リミットとするアンチ教育行政学(=「国民の教育権論」)を提唱し、多大な影響力を持ったことは周知です。教育委員会制度を軸とした教育行政制度を国民の教育権論が分析・批判する、というのが戦後日本の長らくの主軸構図になりました。

アンチ教育行政学は教育政策の「不当」をいうための裁判論理としては有効でしたが、望ましい教育行政は「教育」に関与しない行政であるというシニカルな論法と表裏する理論でもあったために、教育政策を内在的に分析することを重視しない風潮を生んだのも確かです。振り返ってみると、戦後の教育行政に関するデータも分析も、分析の手法もすっぽり空白になっていた、そういうところから私たちは再出発をしています。

国内外に、次から次へと新種の政策の登場が観察されます。そこではもはや、お決まりの悪役や善玉を想定することはできません。既に研究のトレンドの舵は、新しい研究枠組みの獲得へと切られていますが、先行する現実のスピードに分析理論の形成は追いついているとはいえない現状にあります。しかし考えてみれば、使える理論のデフォルトがないということは、創意と工夫の可能性が広がっているということでもあります。

動き続ける教育政策にリアルに切り結ぶことのできる教育政策研究の拠点として、本学会が更に発展しうるように、会員の皆様とともに引き続き力を尽くしたいと思います。

(広瀬裕子・専修大学)